ヴェネツィア絵画のきらめき〜栄光のルネサンスから華麗なる18世紀へ
東急bunkamuraザ・ミュージアム
東急Bunkamuraザ・ミュージアムを訪れるのは昨年のエッシャー展以来となります。この美術館で開催される美術展は自分の嗜好にあったものばかり。今年もプラハ国立美術館展やルドン展などが開催されており,行けなかったのが悔やまれます。今回は満を持しての「ヴェネツィア絵画のきらめき」展を鑑賞してきました。
渋谷の,それも開催直後の土曜日ということで,相応の人出を覚悟していったのですが,開館の15分前に到着した時点で,自分が一番乗りでした。なんだか拍子ぬけ。結局,開館時間になっても並んでいるのは20人程度でした。人気がないわけでもないのでしょうけれど,まだ様子見といった感じの人が多いのでしょうか。なにはともあれ,思いがけなくゆっくりと自分のペースで展示を鑑賞することができました。こういうのは嬉しいです。
展示は宗教画,肖像画,都市景観画の三部構成。どれも自分の好みです。宗教画ではヴェネツィア派の巨頭ティツィアーノとティントレットの作品に目を奪われます。殊にこの美術展のポスターやチケットにも扱われているティツィアーノの「洗礼者ヨハネの首をもつサロメ」の美しさは格別。端正な女性の姿と,彼女が持つ聖者の首との構図があまりにも素敵です。サロメが身に纏う真紅の色彩も,その鮮やかさに息をのんでしまいます。時間を切り取ったような静寂に満ちた緊張感に見惚れます。宗教画ということでキリスト教,とりわけ聖書を題材にとった作品が多いのですが,パルマ・イル・ヴェッキオの「未完の風景の中のウェヌス」などギリシア神話から材をとった展示もありました。西洋絵画を鑑賞するときにキリスト教とギリシア・ローマ神話は避けることができません。ある程度の知識は持っているのですが,絵画を真に楽しもうとするならば,より一層の深い理解が必要のようです。肖像画の展示は大きいものから小さいものまで様々。特にヴェネツィアの統領を輩出したコルナーロ家のフランチェスコ,ジョヴァンニ,マルコの3名を描いた肖像画は非常に大きなもので迫力十分。見応えがありました。残念だったのは肖像画に描かれている人物がいずれも自分の知識にはなかったということ。宗教画と同様に肖像画も描かれた人物の背景を知っていれば,より楽しめると思うのです。それでも,ヴェネツィア統領の系譜図なんて代物もあって面白かったです。ヴェドゥータと呼ばれる都市景観画は18世紀に流行したものですが,当時のヴェネツィアの景観,風俗をそのままに表しており,その華やかな雰囲気が伝わってきます。特にカナレットの手による水の都の景観が本当に素敵なの。写実的な絵画というものは写真以上にリアルに思えるものですが,当時のヴェネツィアの姿を容易に想像することができました。ヴェネツィアの美しさは“アドリア海の真珠”と喩えられることもありますが,その美名が虚飾ではないことが実感できます。ヴェドゥータはヴェネツィアを訪れた観光客に人気があったということですが,それも宜なるかな。ロンギが描いた貴族社会の風俗画も魅力的ではありましたが,より強い印象を残したのはカナレットやベロットらの都市景観画でした。風景画は大好きです。
ティツィアーノやティントレットを除けば,案外地味な展示にも思える今回の美術展ですが,十二分に満足することができました。やはり,落ち着いて自分のペースで鑑賞することができたのは大きいです。もう少し展示が多ければ,なお良かったようにも思うけれども。東急bunkamuraザ・ミュージアムは本当に好きな美術館です。次回の展示は12月からのアルベール・アンカー展。実はよく知らない画家だったのですが,何気に好みの作風のようなので,こちらも是非行きたいと思います。Bunkamuraザ・ミュージアムのサイトに載っている「少女と二匹の猫」があまりにも素敵なんだもの。
2007年09月13日
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