2007年12月24日

アンカー展

アンカー展−故郷スイスのぬくもり
東急Bunkamuraザ・ミュージアム

 下のエントリであげたフィラデルフィア美術館展に引き続いて鑑賞したアンカー展の感想です。まるで知らない画家だったのですが,美術展広告のポスターにすっかり心を奪われてしまいました。こういう形で巡り合えるというのも嬉しいものです。

 9月以来となる東急Bunkamuraザ・ミュージアム。昨年初めて訪れた美術館ですが,自分好みの展覧会が多く,すっかり大好きな美術館となりました。設備も綺麗で好感度が高いです。渋谷駅からの所在がもっと分かり易ければ尚よいのに。いつも迷っているような気がします。
初めて訪れたエッシャー展の混雑の印象が強いのですが,前回訪れたときも今回もそんなに人出は多くなく,ゆっくりと鑑賞することができました。土曜日の午前中ということで相応の覚悟をしていったのですが,少し拍子抜け。有難いことではあります。
アルベール・アンカーは19世紀のスイスの自然主義の画家。日本では殆ど知られていないようですし,実際自分もこの展覧会で初めて知った画家ですが,本国スイスでは国民的人気を誇っているそうです。Bunkamuraザ・ミュージアムでの前回の展覧会のときに貼ってあったポスターの絵「少女と2匹の猫」にすっかり魅せられて,今回の美術展を鑑賞することにしたのですが,これが本当に大正解。こんなに自分好みの作品ばかりだとは思いませんでした。
〈故郷の村〉と名付けられた最初のエリアはアンカーの代名詞ともいうべきスイスの故郷の村を描いた作品が展示されています。ポスターにも使われている「少女と2匹の猫」をここに飾られています。実際の作品は本当に息を飲むくらい素敵でした。この前でずっと立ち止まっていたかったくらい。他にも「水を運ぶ子供たち」や「おともだち」「12月」「おじいさんとおばあさんの家」「スープを飲む少女」など美しい絵ばかり。今まで行ったこともないスイスの農村が描かれているのに郷愁を駆り立てられます。幼い頃に親しんだ『アルプスの少女ハイジ』をはじめとする世界名作劇場の世界がここにあります。穏やかな色調の繊細で透明感のある絵からは優しさと温もりが伝わってきます。どこか懐かしい風景なんだよね。こういう農村で暮らせたら最高だろうなあ。描かれている絵の題材は特に子供や老人,家畜が多いです。子供や老人の表情が柔らかくて素敵。彼らに向ける優しい眼差しを感じます。また,とにかく猫の絵が可愛いのよ。〈静物〉のエリアは4点の展示。これはそれほど特色はなかったかな。続く〈よく遊び,よく学べ〉のエリアは再び子供を描いた絵が中心。特に「花環を編む三人の少女」は大のお気に入り。長閑な風景に心が和みます。人形で遊ぶ少女の姿を描いた「快方に向かう少女」もいいよね。他にも「シャボン玉を吹く少年」や「あやとりをする少女」「ドミノゲームをする少女」など玩具で遊ぶ子供たちの絵は見ていて安心感があります。玩具好きとしては当時の風俗が窺える意味でもこのエリアの絵は好きですね。
後半は〈アンカーの愛した風景〉から。アンカーが旅したイタリア風景を描いた小さな水彩画が展示されています。小品ながら,温かみのある絵で好き。最初のエリアにも水彩は幾点か飾られていますが,感じのいい絵ばかりでアンカーの人柄を窺わせます。続いては再度子供を描いた絵が中心の〈教育と学習〉のエリア。これはもうどれも好きな絵ばかり。敢えて特に好きな絵を挙げると「学校の遠足」や「宿題をする子供」「編み物をしながら本を読む少女」「ローザとベルタ,グッガー姉妹」「王妃ベルトと糸紡ぎの少女たち」など。アンカーは教育者としての側面もあるんですね。どの絵を見ても子供たちが作られていない,ごく自然な表情を浮かべているのが印象的。みんないい表情をしていて,見ているこちらも楽しくなってしまいます。こういうのっていいよなあ。「王妃ベルトと糸紡ぎの少女たち」は伝説に材を採った歴史画。アンカーにしては珍しいみたいです。絵画エリアの最後は〈肖像〉。その名の通り肖像画が集められています。中にはアンカー自身の子供たちを描いた絵もあります。死の床に就く息子を描いた絵も2点あったのが印象的でした。他にもルイーズやマリーなど娘を描いた絵も幾つかあり,心から子供たちを愛していたのがよく分かります。「髪を編む少女」や「窓辺で編み物をする少女」など本当に少女を描いた絵が愛らしいのよ。「赤ずきん」もいいよね。最後のエリアは〈アンカーとファイアンス陶器〉。アンカーの絵が描かれた陶器,その下絵などが展示されています。こういう展示の仕方も面白いなあ,と。
いや,本当にいい展覧会でした。こんな素敵な画家が日本では全くの無名というのが惜しいです。確かに派手さはないんだけどね。素朴で落ち着いた懐かしさを感じる作品の数々を味わうことができます。自分が漠然と憧れていた理想のスイスがアンカーの絵には凝縮されている,そんな気がします。いつかは彼の故郷スイスを,インス村を訪れたいものです。高かったけれど,図録も買ってしまいました。改めて眺めていても全然飽きないんですよね。大変満足させていただきました。
posted by 森山 樹 at 22:57| Comment(0) | TrackBack(1) | 美術展感想
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