2014年09月14日

浜松市美術館「ジョルジョ・デ・キリコ展」

〈2014年美術展感想6展目〉
ジョルジョ・デ・キリコ展
会場:浜松市美術館
会期:2014.08.30-10.19
鑑賞料:¥1,200

 浜松市美術館の「ジョルジョ・デ・キリコ展」に行ってきました。浜松市美術館は昨年の「ポール・デルヴォー展」に続いて二回目。意外と自分好みの美術展をしてくれる印象があります。名古屋から1時間40分くらいで行けるのも好印象。十分に日帰りできる距離なのですよね。今後も好みの美術展の際には是非とも訪れたいと思います。

 今回の「ジョルジョ・デ・キリコ展」は日本では久しぶりとなる大規模な回顧展とのこと。勿論,自分も初めてであります。ジョルジョ・デ・キリコ自体はシュールレアリスム好きとしては以前から大好きな作品が多いので楽しみにしていました。展示数が概ね100点。そのうち,約8割が日本初公開というのが嬉しい。尤も,習作もかなりの数含まれていますので,精神的に疲労する程の量という印象ではありません。適度に腹八分目と言った感じですかね。物足りなさを覚えるくらいにちょうどいい具合に思えました。幾何学や形而上学を題材とした不思議な雰囲気の作品は魅力に溢れています。特にローマ時代の遺跡を背景とした一連の作品が実に楽しい。静物画も荒涼とした田園風景の中に描かれている為に趣が違って感じるのですよね。また,幾何学模様で形成されたマネキンが作品中に登場するのも特徴的。〈吟遊詩人〉は特にお気に入りであります。ローマ神話に材を取った作品が多かったのも嬉しいところ。〈ヒッポカンポス〉は化け物好きにはたまりません。自分の描いた作品を象ったブロンズ像制作を行っていたということを知ったのも収穫でありました。

 期待にそぐわぬ,大変素敵な美術展でありました。浜松まで足を運んだ甲斐があったというものです。今後もシュールレアリスムに関係する美術展は可能な限り行きたいもの。この分野が自分にとっても一番愛する芸術分野のひとつであることに間違いありません。だからこそ,更にシュールレアリスムに対する見識を高めていきたいものであります。

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2014年03月30日

三菱一号館美術館「ザ・ビューティフル」

〈2014年美術展感想3展目〉
ザ・ビューティフル 英国の唯美主義1860-1900
会場:三菱一号館美術館
会期:2014.01.30-05.06
観覧料:¥1,600

 東京の三菱一号館美術館で開催中の「ザ・ビューティフル」を観賞してきました。19世紀末英国の美術潮流のひとつ唯美主義に焦点を当てた美術展です。時折しくも,同じく東京の森アーツギャラリーではこの唯美主義と重なり合う存在であるラファエル前派を扱った美術展が行われています。これは19世紀末英国の所謂ヴィクトリア朝時代を愛する自分としてはどちらも絶対に観賞しなければならない美術展であったといえます。その期待に存分に応える素晴らしい美術展でありました。唯美主義が掲げる「芸術のための芸術(Art for Art’s Sake)」の言葉通りに美学を追求した美術作品の数々は息を呑む美しさ。絵画だけではなく家具工芸品の展示も目を楽しませてくれました。また,会場がヴィクトリア朝と同時代に建てられた三菱一号館美術館ということがあまりにも似つかわしく思えます。ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティやエドワード・バーン=ジョーンズ,アルバート・ムーア,オーブリー・ビアズリーらの作品は特に好み。また,アーツ・アンド・クラフツ運動を始めたウィリアム・モリスによる工芸品の装飾性もたまらないものがあります。また,文学の立場としての唯美主義者であるオスカー・ワイルドに関する展示があったのも嬉しい。この唯美主義を代表するオスカー・ワイルドへの誹謗が唯美主義の退潮を招いたのは皮肉でありましょう。美しく装丁された書物は書痴としては羨ましい。しかし,やはりアルバート・ムーアの≪真夏≫やフレデリック・レイトンの≪パヴォニア≫といった唯美主義絵画の美には圧倒されます。ジョージ・フレデリック・ワッツの≪孔雀の羽を手にする習作≫の官能性も素晴らしい。オーブリー・ビアズリーの≪クライマックス−サロメ≫も大好きですねえ。今回の展示はヴィクトリア・アンド・アルバート博物館の収蔵品を中心とする約140点。いつかは英国本国で唯美主義を掲げる芸術作品を堪能したいものであります。本当に満足度の高い美術展でありました。可能であればもう一度行きたいけれど,ちょっと日程的に厳しそうであります。久しぶりに図録を購入したくなりました。
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2014年02月23日

国立国際美術館「アンドレアス・グルスキー展」

〈2014年美術展感想2展目〉
アンドレアス・グルスキー展
会場:国立国際美術館
会期:2014.02.01-05.11
観覧料:¥1,500

 大阪の国立国際美術館で開催中の「アンドレアス・グルスキー展」を鑑賞してきました。アンドレアス・グルスキーは現代ドイツを代表する写真家であります。実は写真を扱った美術展を観賞するのは今回が初めてとなります。自分でも写真は撮るのですが,芸術としての写真は興味の範疇外だったのです。今回の「アンドレアス・グルスキー展」も然程関心はなかったのですが,友人からの強い勧めを受けて観賞してきました。今回の美術展に出展されているのは約50点。アンドレアス・グルスキー本人によって厳選された作品ということで,現在に至る彼の軌跡を辿るには最適の美術展と言えるでしょう。但し,やはり芸術としての写真の観賞の仕方が分からないというのは致命的。漫然と観賞していても興味深く,面白くはあったのですが,本質的な理解にはまるで至っていないことでありましょう。何というか,概念性の高い作品が多かったように思います。〈バンコク〉と題された作品などはその代表的な例と言えるでしょう。抽象絵画にも思える写真は素直に魅力的でありました。尤も,これがチャオプラヤ川の汚染の産物ということには複雑な思いを抱かざるを得ないのですけれども。また,スーパーカミオカンデ内部を撮影した〈カミオカンデ〉の無機的な美はたまらなく素敵。アンドレアス・グルスキーの写真には群衆を撮ったものが多くありますが,特に〈フランクフルト〉は楽しかった。〈パリ,モンパルナス〉の幾何学模様の中の多彩な色彩の美しさは格別。アパートの窓とカーテンの模様が生み出した或る意味で偶然の産物であることが奇跡に思えます。理解できたかどうかは別にして楽しめた美術展ではありました。但し,やはり芸術としての写真は全く分かりません。機会があれば,現代芸術のひとつの分野として見識を高めたいと思います。問題は現代芸術そのものにあまり興味がないってことかなあ。普通に面白い美術展であることに間違いはありません。
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2014年01月26日

名古屋ボストン美術館「ボストン美術館名品展 北斎」

〈2014年美術展感想1展目〉
ボストン美術館浮世絵名品展 北斎
会場:名古屋ボストン美術館
会期:2013.12.21-2014.03.23
観覧料:¥1,200
図録:未購入

 2014年最初の美術鑑賞は名古屋ボストン美術館の「ボストン美術館浮世絵名品展 北斎」ということになりました。ボストン美術館浮世絵名品展は過去にも二度行われていますが,観賞するのは今回が初めて。題名通りに葛飾北斎の作品が約140点展示された素敵な美術展であります。展示内容は北斎の生涯を追う形で分類され,風景画や人物画或いは博物画,妖怪画など多岐に渡っております。特に風景画は〈富嶽三十六景〉が20余点展示されているのが非常に大きい。「富嶽三十六景 神奈川沖波裏」や「富嶽三十六景 凱風快晴」などは題名を知らずとも一度は必ず見たことのある作品でありましょう。因みに自分も題名は今回初めて知りました。代表作を目にするとやはり震えるものを感じます。尤も,個人的には浮世絵においてはやはり風景画よりも人物画や博物画といった分野に心惹かれてしまいます。だまし絵的な発想に基づく〈六歌仙〉の浮世絵も楽しいものがあります。また,〈百物語〉と題された一連の妖怪画・幽霊画の素晴らしさもたまりません。特に「百物語 さらやしき」は番長皿屋敷を材に採った作品でありますが,皿の部分を蛇のように見立てた独特の構図が面白いです。或いは「鷽 垂桜」や「文鳥 辛夷花」といった鳥と花を並べた博物画の現実感も素晴らしい。博物画好きとしては思わず見入ってしまいました。珍しいところでは組上絵と呼ばれる立体的な作品も幾つか展示があったのが嬉しい。また「北斎漫画」も楽しいですね。これだけでも全部眺めていたい気になります。ここ数年,妙に好きになってきた浮世絵ですが,やはりその傾向は今年も変わらなさそう。積極的に美術展観賞を行い,見識を深めたいと思います。ボストン美術館という屈指の浮世絵収蔵を誇る美術館にふさわしい素敵な美術展でありました。
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2013年12月08日

大阪市立美術館「北魏 石造仏教彫刻の展開」

〈2013年美術展感想23展目〉
北魏 石造仏教彫刻の展開
会場:大阪市立美術館
会期:2013.09.07-10.20
観覧料:¥1,300
図録:未購入

 中国南北朝時代の北魏で花開いた石造仏教彫刻を題材とした美術展です。意外に中国の仏教美術についての美術展というのは珍しい気がします。紛いなりにも中国史を学んだ身としては北魏と言えばやはり石窟寺院の印象が強い国家であります。漢民族ではなく鮮卑族の拓跋氏により建国された国であるが故に例えば唐代の仏教美術とはまた異なった印象があるのが面白い。洗練された美しさという点においては唐代の仏教美術には劣りますが,素朴さ故の真摯な仏教信仰は北魏の仏教美術の方が勝っている気がします。また,ガンダーラやグプタといったインド仏教美術の影響が特に衣服の面において見受けられるのも興味深いところ。必ずしも地域性といったもではないように思われますが,このあたりはどうなんだろうなあ。文成帝による仏教保護政策によるものなのかもしれません。孝文帝まで行ってしまうと逆に漢化政策が推進された筈だしなあ。また,石窟寺院における仏教美術の特徴でもある伽藍形式が如実に見られるのも楽しいもの。この伽藍に彫られた細工を見るのもこの時代の仏教美術を鑑賞する楽しみのひとつと言えましょう。尤も,やはり仏教美術への造詣はまだまだ浅いものを痛感さぜるを得ません。今後も機会があれば仏教美術を題材とした美術展に積極的に訪れたいもの。少しずつ知識と見識を高めたいと思います。石造彫刻が主体ということもあり,大型の展示が多く迫力に満ちた見応えのある美術展でありました。
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2013年12月03日

国立国際美術館「貴婦人と一角獣展」

〈2013年美術展感想22展目〉
貴婦人と一角獣展
会場:国立国際美術館
会期:2013.07.27-10.20
観覧料:¥1,500
図録:未購入

 その存在を知ってから一度実物を見てみたいと思っていた美術作品のひとつがフランス国立クリュニー中世美術館に収蔵されている≪貴婦人と一角獣≫と題された6枚のタピスリーです。このフランスの至宝とも言うべきタピスリーが日本で鑑賞出来る日が来ようとは夢にも思っていませんでした。まさに僥倖であります。自分が訪れたのは大阪開催の舞台となった国立国際美術館。開館を待ち切れずに30分前から待機したこともあって当日の最初に入場することが出来ました。実物を目の当たりにした≪貴婦人と一角獣≫のタピスリーは素晴らしいの一言。一枚一枚のタピスリーに吸い込まれるように立ちつくしてしまいました。≪触角≫≪味覚≫≪嗅覚≫≪聴覚≫≪視覚≫という人間の五感が描かれたタピスリーの解釈は納得出来るだけの説得力に満ちています。そして,それら5枚のタピスリーを受けて≪我が唯一の望み≫と題された6枚目のタピスリーが意味するものは未だに謎を秘めているとのこと。ミルフルールと呼ばれる千花文様は眼にも鮮やかであり,一角獣と獅子に傅かれた貴婦人の姿も実に麗しいものがあります。各タピスリーに織り込まれた無数の花や動物の姿も精緻であり,鑑賞していて全く飽きを感じさせません。今回の美術展の特徴はあくまでも主役である≪貴婦人と一角獣≫の6枚のタピスリーへの理解を深める為に他の展示が為されているということ。展示数そのものはそれ程多くはないのですが,≪貴婦人と一角獣≫を楽しむ上での補完となる展示ばかりで興味深いものがありました。とにかく≪貴婦人と一角獣≫の6枚のタピスリー全てを実際に鑑賞に出来たというだけでも自分にとっては非常に意義深い美術展でありました。いつか,また,今度はクリュニー中世美術館でこの≪貴婦人と一角獣≫に再会したいものであります。このような機会が与えられたことを感謝せざるには得られません。本当に想い出深い美術展でありました。

 余談。普段は利用しないのですが,今回に限っては音声ガイドを利用しました。池田秀一による語りと池田昌子による解説が雰囲気を高めて素晴らしい。この音声ガイドもこの美術展の素晴らしさを増している要因のひとつかと思います。この配役を決めた人を抱きしめたくなってしまいますね。
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2013年11月24日

太田記念美術館「江戸の美男子」

〈2013年美術展感想21展目〉
江戸の美男子
会場:太田記念美術館
会期:2013.07.02-08.25
観覧料:¥1,000
図録:未購入

 太田記念美術館で開催された「江戸の美男子」展に行ってきました。太田記念美術館は原宿にある美術館ですが,此処のところ東京を訪れる度に立ち寄っている気がします。自分の浮世絵鑑賞の或る意味で出発地点とも言える美術館であります。原宿の喧騒を感じさせない静謐な雰囲気が非常に好み。2か月に1回展示物が入れ替わるので常に新鮮な気持ちで鑑賞出来るのも嬉しいです。今回は「江戸の美男子」ということで鈴木春信や喜多川歌麿,葛飾北斎,歌川国芳らが描く人物画が中心となります。浮世絵と言うとどうしても美人画の印象が強いのですが,美男子を描いた作品も結構な数があるのですよね。但し,自分の興味の範疇外である歌舞伎役者を描いた作品が多いのがちょっと難点。楽しめないわけではないのですが,自分の知識の欠如が深い理解にまで至らないものを感じます。これが歴史上或いは伝説上の英傑を題材とした作品であれば,また違ったのでありましょうけれども。尤も,江戸の粋や通といった美意識を知る上では興味深い作品が多かったのもまた事実。まだまだ浮世絵を楽しむ上での経験値には徹底して欠けていますので,その意味でも良い美術展であったかと思います。今後も浮世絵については勉強をすることで理解を深めていきたいと思います。
posted by 森山 樹 at 22:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術展感想

2013年11月21日

損保ジャパン東郷青児美術館「〈遊ぶ〉シュルレアリスム」

〈2013年美術展感想20展目〉
〈遊ぶ〉シュルレアリスム
会場:損保ジャパン東郷青児美術館
会期:2013.07.09-08.25
観覧料:¥1,000
図録:未購入

 シュルレアリスムを題材に損保ジャパン東郷青児美術館で開催された美術展です。シュルレアリスムは20世紀の芸術運動の中でほぼ唯一自分の好みとなっています。もともと,不思議や不条理に心惹かれる性質でありますので,シュルレアリスムとの相性が良かったのでありましょう。今回の美術展は絵画に留まらず,オブジェやコラージュ,フロッタージュといった技法を用いられた作品も多数展示されております。シュルレアリスムという分野故に理解に苦しむ作品も多々ありましたが,それでもなお根底に流れる“遊び”の精神が垣間見えるものばかりでありました。その意味で非常に楽しい美術展と言えることでありましょう。芸術に必ずしも造詣が深くなくとも楽しめる美術展かと思われます。展示数は約200点。上述のように絵画以外の彫刻や写真といった多様な作品,或いは雑誌や書籍といった資料など様々な角度からシュルレアリスムに焦点を当てた美術展です。ただ,やはり個人的に一番心惹かれるのはルネ・マグリットやポール・デルヴォー,マックス・エルンスト,サルバトール・ダリ,ジョルジュ・デ・キリコといったシュルレアリスム画家の作品であることは仕方がないことかな。特に大好きなルネ・マグリットの作品をある程度まとまった量で鑑賞出来たことが非常に嬉しかった。自分にとっては特別の地位を占めている作家なのであると実感します。マン・レイやマルセル・デュシャンらのオブジェも遊び心或いは悪戯心いっぱいで非常に楽しい。特に絵画作品以外のオブジェやコラージュを用いた作品は造詣が深くないこともあり新鮮な気持ちで面白かった。今回の美術展を機に更にシュルレアリスムに対する知識と見識を深めようという気持ちがより強まりました。損保ジャパン東郷青児美術館も最近は東京に来る度に訪れている気がしますね。自分好みの美術展を企画してくれる大好きな美術館のひとつであります。
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2013年11月18日

東京都美術館「ルーヴル美術館展」

〈2013年美術展感想19展目〉
ルーヴル美術館展−地中海四千年のものがたり
会場:東京都美術館
会期:2013.07.20-09.23
観覧料:¥1,500
図録:未購入

 地中海という地域に焦点を絞ってルーヴル美術館の収蔵品の中から4000年に渡る歴史を俯瞰するという趣旨の美術展です。東京都美術館は改装されてから自分好みの素敵な美術展を連続して開催してくれるのが嬉しい。その殆どが巡回してくれないので東京まで遠征をしないといけないのが困りものではありますけれど。御蔭で見逃した美術展も幾つかあります。本美術展は流石に見逃したくなかったので少々無理をしてでも遠征するつもりではありました。そして,それに見合うだけの素晴らしい美術展であったように思います。展示総数は6つの時代に分けられた約270点。かなり見応えのある展示数であります。内容も素晴らしく濃密。特に世界史趣味者としては〈中世の地中海〉あたりまでの展示物が実に楽しくありました。中でも我が愛しの≪アルテミス,通称「ギャビーのディアナ」≫の美しさは格別なもの。正に放心状態でその場に留まってしまいました。彫刻に造詣は深くないのですが,古代ギリシアの白亜の彫刻には神々しさを感じざるを得ません。他にもギリシア神話やローマ神話,或いはエジプト神話や古代オリエント神話に纏わる事物には心惹かれてしまいます。魔術に用いられたとされるプタハ=パテクの像も素敵だったなあ。キュベレやミトラス,イシスといった神柱を題材にした彫像や浮彫もたまらないものがありました。時代が下がってルネサンス以降は地中海で活躍した画家による絵画作品が中心になります。此方はそれ程馴染みの深い画家はいませんでしたが,それでも充分に楽しむことが出来ます。主題が主題だけにギリシア神話を題材にした作品や地中海の美しさを描いた風景画が中心だったからでもありましょう。特に“ヨーロッパ”の語源ともなった美女エウロペの掠奪を描いた幾枚かの絵画が心に残ります。東洋と西洋の狭間に位置する地中海を様々な角度から堪能できる美術展でありました。世界史趣味者としての,或いは神話趣味者としての観点からも大満足。無理をして平日に来館したことでゆっくりと鑑賞出来たのも嬉しかった。いつかは絶対にルーヴル美術館へと足を運ぼうと思わせる美術展でありました。やっぱり地中海は自分にとって憧れの地域のひとつであると実感させられます。
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2013年11月17日

三菱一号館美術館「浮世絵Floating World」

〈2013年美術展感想18展目〉
浮世絵Floating World
会場:三菱一号館美術館
会期:2013.06.22-09.08
観覧料:¥1,300
図録:未購入

 最近,関東遠征の際には必ず訪れている気がする三菱一号館美術館。東京駅から直ぐ近いという利点もありますが,とにかく建物自体の雰囲気がたまらなく素敵なのですよね。それなりに多くの美術館を訪れていますが,ここまで好きな美術館はそれ程数多くありません。今回の三菱一号館美術館で開催の美術展は「浮世絵Floating World」。その名の通り,浮世絵を扱った美術展です。浮世絵自体に対する造詣は殆どないのですが,最近関心を持ち始めた分野ということで鑑賞してみました。今回の美術展は全三期による構成となっており,それぞれで展示物が全く異なった模様。自分が鑑賞したのは第三期の≪うつりゆく江戸から東京≫と題された江戸時代末期から明治時代初頭にかけての作品が集められたもの。作者は歌川広重や歌川国芳,小林清親,楊洲周延といった感じ。郷愁溢れる江戸や新しい時代を迎える横浜の姿を描いた風景画が主体となっておりました。普段はあまり目にしない分野の作品ということで目新しさもあり楽しむことが出来たのは確かですが,如何せん同じような作品を続けざまに何枚も鑑賞したおかげで最後には感覚が麻痺してしまったのが残念。どれを見ても同じに見えてしまったのですよね。やはり浮世絵は人物画が自分の好みということなのでありましょう。或いは東京の地理に明るく,現在の風景との比較が出来れば,より楽しめたのかもしれません。後から思えば第一期の≪浮世絵の黄金期≫が江戸のグラビアということで鈴木春信の〈風流やつし七小町〉あたりが鑑賞出来て一番好みであったみたい。尤も,会期の都合上,鑑賞することはほぼ不可能だったわけではありますけれども。何はともあれ,疲労感もありましたが楽しく鑑賞出来ました。浮世絵は今後もうちょっと勉強したい分野ですね。積極的に美術展に足を運ぼうと思います。
posted by 森山 樹 at 13:33| Comment(2) | TrackBack(0) | 美術展感想

2013年11月10日

色を見る,色を楽しむ

〈2013年美術展感想17展目〉
色を見る,色を楽しむ
会場:ブリヂストン美術館
会期:2013.06.22-09.18
観覧料:¥800
図録:未購入

 “色彩”を題材としたブリジストン美術館のコレクション展。ブリヂストン美術館は今回初めてとなる美術館ですが,意外に東京駅から近いことに驚きました。三井記念美術館や三菱一号館美術館と共に今後も訪れることになりそうな美術館であります。今回の美術展の出展数は約170点。ルノワールやボナールといった色彩豊かな画風の画家から白と黒の世界を愛したルドンまで幅広い作品が展示されています。このような切り口の美術展というのも面白いもの。コレクション展ならではの視点ということも出来るでしょう。個人的にはやはり印象派までの作品が好み。ポスト印象派以降の抽象性が高い作品を楽しむには美術素養がなさ過ぎます。シュールレアリスムの如く不条理な世界を楽しむ作品は大好きなのですけれどね。今回の美術展でもコローやルノワール,シスレー,ミレーといった作品に心惹かれました。特にルノワールの〈すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢〉の愛らしさがたまりません。20世紀美術ではジョルジュ・デ・キリコの〈吟遊詩人〉は大好き。また,やはりルドンのリトグラフ集『夢想』に収められた作品群も自分好みであります。詩情に満ちた作品名を見ているだけで楽しいものがあります。それ程期待していなかった美術展ではありましたが,それに反して非常に楽しめました。ブリヂストン美術館自体の雰囲気も好印象。特に常設展示に古代エジプトの彫刻や石板があるのが素敵。〈セクメト神像〉に暫し見惚れてしまいました。今後も機会があれば積極的に訪れたい美術館であります。
posted by 森山 樹 at 11:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術展感想

2013年10月29日

大妖怪展

〈2013年美術展感想16展目〉
大妖怪展−鬼と妖怪そしてゲゲゲ
会場:三井記念美術館
会期:2013.07.06-09.01
観覧料:¥1,200
図録:未購入

 中世から近世までの妖怪変化の歴史を能面や浮世絵,絵巻,版本などで辿る美術展です。そして,それらの作品から水木しげるの『ゲゲゲの鬼太郎』に繋がる妖怪の系譜を俯瞰するという視点が面白い。妖怪は心底大好きですので,こういった試みは諸手を上げて歓迎いたします。展示総数は前期後期を合わせて全部で110点弱。様々な視点から妖怪を見渡す展示が揃っており,かなり見応えがありました。重要文化財級の展示が多かったのも嬉しいです。基本的にはやはり絵巻や版本に描かれた妖怪像に心惹かれます。歌川国芳や月岡芳年らの妖怪を題材にした浮世絵も実に楽しい。何度となく鑑賞した作品もありますが,その都度新しい気持ちで楽しめるように思います。他には能面や楽器,雛道具など妖怪に関わる事物が多かったのも特徴的。特に能面はその意味や由来の解説が興味深くありました。能という分野には明るくないので今後の研究課題のひとつとなりそうであります。鳥山石燕の〈百鬼夜行図〉もやはり楽しい。或いは東洋大学附属図書館に収蔵される〈稲生物怪録〉の展示にも心奪われます。妖怪の恐怖というよりも愛嬌を前面に押し出した近世の図案は見ているだけで楽しいのですよね。展示の最後には水木しげるの原画展示もございました。〈がしゃどくろ〉の格好良さがたまりません。〈塗壁〉も素敵であります。妖怪好きとしては心底楽しめる素敵な美術展でありました。改めて自分が妖怪好きであることを実感いたします。この類の美術展は積極的に足を運びたいものであります。また,今回が初めてであった三井記念美術館そのものも好印象。また機会があれば訪れたいと思います。
posted by 森山 樹 at 22:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術展感想

2013年10月27日

遊び

〈2013年美術展感想15展目〉
遊び
会場:京都国立博物館
会期:2013.07.13-08.25
観覧料:¥1,000
図録:未購入

 遊びを題材として京都国立博物館で開催された美術展です。遊ぶということは自分にとって人生の目標のひとつでもある重要なこと。それ故に興味深く鑑賞することが出来ました。展示数は約130点。様々な視点から遊ぶということを俯瞰した内容となっております。古代の遊びである舞や酒宴の楽しみ,或いは年中行事や遊山,大衆芸能から文人の嗜み,動物の戯れ,室内での競技から子供の遊興に到るまで単に遊びといってもその幅の広さに驚かされます。そのいずれもに共通するのが心の余裕を持たせるということ。即ち,余暇として遊びを見ることがやはり重要なのでありましょう。上述のように遊びという概念が様々な分野を内包する為に今回の展示物も多岐に渡っています。〈徒然草〉や〈源氏物語画帖〉や〈定武蘭亭序〉といったものもあれば,〈左義長羽子板〉や〈貝桶・合貝〉といったものの展示もありました。貝合わせに使われた〈貝桶・合貝〉の実物を見るのは今回が初めて。以前から鑑賞したかった事物ですので嬉しいです。或いは自分の出身県のひとつである山口県に由来する〈享保雛(大内雛)〉もやはり興味深い。また,中国の文人の嗜みである“琴棋書画”という概念は今回初めて知りました。同じく文化を愛するものとして心の片隅に入れておきたいものであります。豊臣棄丸の為に作られた玩具船も印象的でありましたが,個人的には現代の室内遊戯の徒として〈片身替縞蒔絵螺鈿双六盤〉に一番心惹かれました。自分が平安朝の貴族であれば,きっとこの遊びに熱中したことでありましょう。何はともあれ,遊びという馴染み深い題材が如何に美術に影響を及ぼしているかが良く分かる素敵な美術展でありました。こういう題材から俯瞰する美術展がもっと増えて欲しいものであります。
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2013年10月26日

みほとけのかたち

〈2013年美術展感想14展目〉
みほとけのかたち
会場:奈良国立博物館
会期:2013.07.20-09.16
観覧料:¥1,000
図録:未購入

 奈良国立博物館で開催された「みほとけのかたち」の感想です。仏像を見るのは好きなのですが,知識はあまりないのが残念。それでも全部で90点を越える仏像或いは曼荼羅図など仏教美術を心行くまで堪能することが出来ました。奈良国立博物館は常設展示の仏像館も見ごたえがあって大好きです。今回の展示は国宝5点,重要文化財42点が揃う貴重なもの。前期と後期で展示物に入れ替えが行われる為にその全部を鑑賞出来たわけではありませんが,それにしても得難い経験でありました。一言で仏像といってもその姿形は千差万別。様々な視点から比較鑑賞出来る今回の美術展は仏像に対する更なる興味や視点を養ってくれたように思います。個人的には元興寺の〈薬師如来立像〉や海住山寺の〈四天王立像〉などがお気に入り。〈薬師如来立像〉のあまりの美しさがたまりません。〈四天王立像〉は四天王それぞれの個性が楽しい。武神としての迫力にも圧倒されます。また,奈良国立博物館収蔵の〈伽藍神立像〉の何処か戯画めいた感じも楽しいです。同じく奈良国立博物館収蔵の〈愛染明王坐像〉もその厳めしい尊顔がたまらない。変わったところでは仏像の中に納入されていた物品の展示もありました。何処かミステリィ的な雰囲気が好みであります。展示の最後に設けられた曼荼羅図なども素敵でありました。残念だったのは〈両界曼荼羅〉が復元模写の展示だったということ。後半の展示だと実物を鑑賞することが出来たのですよね。尤も,後半の展示では見られなかった〈天寿国繍帳〉を見られたのではありましたけれども。実に満足感のある美術展でありました。もう少し仏像に対する知識があれば,なお楽しめたことでありましょう。このあたりは今後の課題にしたいと思います。なかなか全ての芸術分野に通じるということは難しいのですけれどね。関心をもったところから勉強していきたいものであります。
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2013年10月20日

夢の起源 オディロン・ルドン

〈2013年美術展感想13展目〉
夢の起源 オディロン・ルドン
会場:静岡市美術館
会期:2013.06.29-.8.25
観覧料:¥1,100
図録:未購入

 「ポール・デルヴォー展」と同じく静岡遠征時に鑑賞した美術展です。静岡市美術館も今回初めて訪れた美術館ですが,静岡駅前にある非常に綺麗な美術館でありました。名古屋から充分に日帰り出来る距離ということもあって,今後も美術展によっては遠征することになりそうです。何と言っても,普通に夜19時まで開館しているというのが素晴らしい。オディロン・ルドンと言えば岐阜県美術館の印象が強いのですが,今回の美術展でも岐阜県美術館からの出展が多かったです。ルドンの故郷のボルドー美術館などからの約150点の展示を鑑賞することが出来ました。ルドンと言えば黒一色の怪奇で空想的な世界を描いた作家という印象が強いのですが,晩年に手掛けた色彩溢れる夢幻的な作品もまた魅力的であります。どちらの作風も等しく好み。但し,やはりルドンを代表する黒一色で表現された作品により強く引き寄せられるように思います。特に『夢の中で』や『エドガー・ポーに』或いは『起源』に収録されたリトグラフは格別。物語性を感じさせる奇妙な作品名も楽しいです。『エドガー・ポーに』の〈1.眼は奇妙な気球のように無限に向かう〉や〈3.仮面は弔いの鐘を鳴らす〉などは作品名だけで強烈に想像力を刺激されてしまいます。或いは『聖アントワーヌの誘惑』を題材とした一連の作品もまた空想動物好きとしてはたまりません。晩年に手掛けた色彩豊かな作品には静物画など多彩な分野が示されるのが面白い。〈神秘的な対話〉や〈聖母〉など神秘的な作品もいいのですが,やはり〈アポロンの戦車〉,〈ペガサスに乗るミューズ〉などギリシア神話を由来とする作品がよりお気に入りではあります。〈若き日の仏陀〉というのもなかなか珍しい題材ではないでしょうか。改めて自分が奇想の作家としてのオディロン・ルドンが好みであるということを痛感した美術展でありました。彼の生み出した夢の世界を存分に堪能出来て大満足であります。ルドンの美術展は積極的に鑑賞したいものですね。
posted by 森山 樹 at 21:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術展感想

2013年10月19日

ポール・デルヴォー展

〈2013年美術展感想12展目〉
ポール・デルヴォー展 夢をめぐる旅
会場:浜松市美術館
会期:2013.06.01-07.15
観覧料:¥1,000
図録:未購入

 静岡県の浜松市美術館で開催された「ポール・デルヴォー展」の感想です。「ポール・デルヴォー展」は岡崎市で開催されていた時に行きたかったのですが結局行けなかったのですよね。浜松市もそれ程遠くないので重畳でありました。なお,浜松市美術館は今回が初めて。浜松駅からそれなりに遠いのが難点ではありますが,浜松城公園の中にあるので立ち寄り易いとは思います。施設はちょっと古い感じだったけれどね。ポール・デルヴォーはシュルレアリスムを代表する作家。即ち,自分にとっては愛すべき作品が並ぶ美術展でありました。出展数は約100点。その半数以上が日本初公開ということが非常に嬉しい。ポール・デルヴォーの作品の静寂に包まれた冷たい雰囲気を愛してやみません。彼の作品に繰り返し登場する列車や鏡,ランプといったモティーフもたまらなく好み。或いはギリシアやローマの古代建築を思わせる世界観も素敵に心を捕えます。特に気に入った作品はやはりポール・デルヴォーの魅力が存分に詰まった「トンネル」や「エペソスの集いII」など。特に「トンネル」で描かれる幻想的な女性たちはあまりにも美しい。ポール・デルヴォーが描いた夢の世界の虜になってしまいます。なお,今回の美術展は習作の展示が多いのも特徴的であります。習作が如何に作品に反映されるのかという意味においても興味深いものがありました。また,ポール・デルヴォーのアトリエに残されていた列車やランプの模型の展示も面白いですね。最初の油彩画から晩年に至るまでのポール・デルヴォーの夢と幻想の軌跡を辿る素敵な美術展でありました。あまりの濃密な内容に過呼吸を起こしそうになった程であります。やはりシュルレアリスムは自分の愛し追い求める美術領域のひとつ。今後も機会を逃さないように美術展を訪れようと思います。
posted by 森山 樹 at 21:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術展感想

2013年10月14日

アートに生きた女たち

〈2013年美術展感想11展目〉
アートに生きた女たち
会場:名古屋ボストン美術館
会期:2013.05.25-09.29
観覧料:¥1,200
図録:未購入

 19世紀から20世紀にかけて活躍した女性芸術家の作品に焦点を当てた美術展です。名古屋ボストン美術館は何度も行った美術館ですが,相変わらず来館者が少なくて不安になります。交通の便もいいし,素敵な美術展も多いのですけれどね。何が問題なのかなあ。今回の展示は絵画に留まらず,写真や陶磁器,宝飾,彫刻など多岐に渡る分野からの80点弱。芸術鑑賞において特段男女の性差ということを意識したことはないのですが,今回の美術展を鑑賞してもやはり自分にはその差が理解出来ませんでした。単純に自分の芸術的な素養のなさかもしれませんけれども。様々な分野の作品が展示されていましたが,やはり個人的には絵画が一番心を惹かれます。殊にマリ・アントワネットに愛されたフランスのヴィジェ=ルブランの「若い女の肖像」は特に印象的であります。まあ,ヴィジェ=ルブラン自身は18世紀の画家なのでこの美術展の趣旨からは若干離れるのですけれども。女性芸術家の先駆けとしては欠かすことが出来ない人物であります。また,カサットとドガ,モリゾとマネ,或いはオキーフとスティーグリッツといった交流のある男女の芸術家の作品が展示されていたのは面白かった。互いに与えた影響まではきちんとは理解出来ていないのだけれども。後はやはりマリー・ローランサンの作品は大好きであることを実感します。〈三人のクレオールの女たち〉の可憐な美しさが印象的でありました。ウィリアム・マクレガー・バクストンの〈新しい首飾り〉も良かったなあ。殆どの女性芸術家は今回初めての鑑賞となりましたが充分に楽しめました。あまりこの手の視点から芸術を鑑賞することはないので意外に新鮮です。今後ちょっと意識して鑑賞しようという動機づけとなる美術展でありました。
posted by 森山 樹 at 15:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術展感想

2013年10月12日

幽霊妖怪画大全集

〈2013年美術展感想10展目〉
幽霊妖怪画大全集
会場:大阪歴史博物館
会期:2013.04.20-06.09
観覧料:¥1,200
図録:未購入

 幽霊や妖怪と聞いては絶対に鑑賞したくなるのが我が身ながら救い難いところ。そんなわけで大阪歴史博物館で開催された「幽霊妖怪画大全集」を鑑賞しました。大阪歴史博物館は初めてだったのですけれど,大阪城直ぐ近くにこんな大きな博物館があったとは知りませんでした。今回の展示は幽霊画と妖怪画合わせて160展という充実した内容ですが,前期後期で一部展示の入れ替えがあった為に全部を鑑賞出来たわけではありません。個人的には幽霊画は非常に充実していて楽しめました。円山応挙や谷文晁,河鍋暁斎,歌川国芳らの作品は特に印象的でありました。我ながら悪趣味ではありますが,所謂残酷絵に近いものほど心惹かれる傾向を感じます。改めて河鍋暁斎や歌川国芳が大好きであることを再認識いたしました。一方で妖怪画は数は多いもののいまひとつという感じが否めず。妖怪画にも関わらず,鳥山石燕の作品がないというのは点睛を欠いているように思います。歌川国芳や月岡芳年らの作品が多かったのは嬉しかったけれども。日本の伝承の中に根付く妖怪の魅力が素晴らしいものがあります。特に歴史上或いは伝説上の英雄と妖怪との逸話を描いた浮世絵は自分にとって最高の作品であります。付喪神は見ていて楽しいのだけど,背景がどうしても薄いのですよね。伊藤若冲の〈付喪神図〉もいいのだけど,やっぱり自分は歌川国芳の〈相馬の古内裏〉に心を惹かれます。勿論,円山応挙作と伝えられる〈幽霊図〉にも魅せられましたけれどね。全体的に子供向けという印象は否めませんが,それはそれで悪くないかなあ。大人向けの解説も欲しかったところではありますけれども。何はともあれ,非常に満足度の高い美術展でありました。やっぱり幽霊や妖怪は大好きなのです。
posted by 森山 樹 at 22:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術展感想

2013年10月08日

森と湖の国 フィンランド・デザイン

〈2013年美術展感想9展目〉
森と湖の国 フィンランド・デザイン
会場:大阪市立東洋陶磁美術館
会期:2013.04.20-07.28
観覧料:¥1,000
図録:未購入

 大阪市立東洋陶磁美術館で開催された「森と湖の国フィンランド・デザイン」の感想です。大阪市立東洋陶磁美術館は訪れるのは本当に久しぶり。常設展はひたすらに陶磁ばかりであります。最初は面白く鑑賞していたのですが,最後の方はすっかり摩耗して,何を見ても同じに感じたことを思い出します。懐かしい。まあ,今回は常設展は鑑賞していないのですが。改めて鑑賞すると違った感慨を抱くかもしれません。今回の「森と湖の国フィンランド・デザイン」の中心となるのは所謂生活工芸。自分にとってはそれ程関心のない分野です。展示数はガラス器と陶磁器を合わせて約150件。主に18世紀後半から現代に至るフィンランド的なデザインを堪能することが出来ました。勿論,全く知識に欠ける自分ではありますが,それでもそれなりに楽しめるのが素敵。もともとフィンランドという国自体がたまらなく好きなこともありますが,彼らが作りだす洗練された生活工芸品そのものが実に魅力的。厳しい気候の中で室内で過ごす時間を楽しむ為の精神的な豊かさの追求と発露を感じます。こういった洗練された意匠で毎日の暮らしを彩るフィンランドの生活に思わず憧れてしまいます。ミュージアム・ショップではフィンランドを代表するキャラクター,ムーミントロールのグッズも多数揃えられており,その意味でも楽しめました。いつか,フィンランドには実際に行ってみたいですね。なんなら永住しても構わないのだけどなあ。
posted by 森山 樹 at 21:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術展感想

2013年10月06日

上村松園展

〈2013年美術展感想8展目〉
上村松園展
会場:名古屋市美術館
会期:2013.04.20-06.02
観覧料:¥1,300
図録:未購入

 名古屋市美術館で開催された「上村松園展」の感想です。名古屋市美術館の開館25周年記念の美術展でもあります。名古屋市美術館は愛知県美術館と並んで最も多く訪れる美術館のひとつ。今後とも素敵な美術展を企画して欲しいものであります。「上村松園展」はその意味では当初あまり関心はありませんでした。元来,西洋画嗜好が強く日本の近代画には然して興味がないのですよね。今回,「上村松園展」を訪れたのも時間潰しの意味合いが強かったのですが,鑑賞してみると存外に楽しむことが出来ました。何よりも美人画が中心というのが自分にとっては非常に好み。また,〈静御前〉や〈楊貴妃〉,〈紫式部〉,〈伊勢大輔〉ら歴史上或いは伝説上に名を残す美女を描くという題材的にも心惹かれるものを感じます。殊に月を見上げる〈紫式部〉はあまりにも美しい。王朝美人,唐美人の作品は何よりも印象に残りました。舞い散る紅葉の中に佇む美女を描いた〈花がたみ〉も素晴らしい。日本近代画には明るくない為に背景的なものを知らないのは残念でありましたが,それでも繊細で上品な美人画を多数堪能することが出来ました。改めて日本近代画についても今後知識を深めて行きたいと思わせる,その契機となりそうな美術展でありました。実に満足であります。
posted by 森山 樹 at 22:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術展感想